わたしたちは動物の命を犠牲にしてまで、使い捨てプラスチックを使う必要はあるのでしょうか?
実は、わたしたちの便利な暮らしは、動物たちの命を代償にして成りたっています。
わたしたちには環境を守る責任はないのでしょうか?
自分ができることから始める人が、ひとりでも増えれば、遠く離れた国の人、動物、次の世代の子どもたち、きっとみんなが幸せに生きられます。
この記事では、
- 使い捨てプラスチックの使用で、被害を被る動物たちの実態と問題構造
- 解決策としての、わたしたちの暮らし方と企業の使い捨てプラに対する取り組み
について、お伝えします。
雄大な海やスキューバダイビングやサーフィンが好きなひとりの人間として、美しい海の動物たちが被っている問題に焦点を当てながら、55の国と地域で環境保護に取り組む国際NGOグリーンピースや、わたしもボランティアとして携わっているグリーンピースのゴミを出さない取り組みの情報を交えてお伝えします。
記事の方が詳しく記載していますが、動画で簡単に知りたい人は、ぜひ併せて視聴してみてください。
<前編>
<後編>
プラごみを食べてしまう動物を見たことありますか?
魚を解剖したら、胃の中からプラスチックごみが見つかったというニュースを目にしたことがある方も最近は多くなってきたかもしれません。
まず次の問いを考えてみてください。
実は、世界ではクジラの体内から、長さが13mの漁網やプラスチックでできた自動車のエンジンカバーが見つかったことさえもあります。
前頭部にプラスチックごみが引っかかり、よく泳げないイルカもいます。
クラゲを好物とするウミガメは、同じく透明であるプラスチックのゴミ袋をクラゲと間違えて口にしてしまうことがあります。
あなたは、なぜ海の動物たちがプラスチックをエサと間違えてしまうのか分かりますか?
1つはその見た目で、クラゲや小魚などに間違えてしまいます。
もう1つは匂いで、プラスチックごみはエサのような匂いがすることがあるというのです。
海に浮かぶプラスチックごみには、大量の藻類が発生します。
この藻類をオキアミなどが食べ、その過程でジメチルスルフィドという物質が放つ硫黄臭をたどってやって来て、プラスチックごみを食べてしまうのです。
プラスチック、実はリサイクルされてない?
みなさんがご存知の通り、使い捨てプラスチックは、海の生きものたちを傷つけるだけでなく、CO2排出による悪影響も与えます。
わたしたちがすぐイメージできる製造工程や、廃棄工程だけでなく、採掘・輸送・製油・流通などのすべての工程で、大量のCO2を出し、これが気候変動などに繋がっています。
そして、日本のわたしたちにも直接実感しやすい豪雨や台風の激化をはじめとして、海面上昇などによって生涯のほとんどを氷で覆われた海の上で過ごすシロクマをはじめとして、セイウチ、ホッキョクギツネなどにも危機が迫っています。
海に捨てられるプラスチックは毎年1200万トン(=毎分トラック1台分)というデータもあります。
レジ袋の有料化は記憶に新しい人も多いと思いますが、実際にレジ袋の辞退率は2021年には7~8割にも改善しました。*1
日本は環境への取り組みが進んでいると思いますか?
実はレジ袋はプラスチックごみの2%しかなく、約半分は容器包装類です。*2
そして、わたしたち日本人の1人あたりの容器包装プラごみ排出量は、アメリカに次いで世界2位です。*2
2050年までにプラスチック容器包装は4倍以上に増える可能性もあるというデータもあります。
プラスチックと言えばリサイクルできる=循環できる資源だと思っていませんか?
実は、石油から作られたプラスチックが分解されるまでにどれくらいの時間がかかるのか、正確には分かっていません。
完全に分解されることさえないかもしれません。
プラスチックごみは、海の波の力や太陽光の紫外線などにより徐々に破壊されて細かい断片になり、マイクロプラスチック(5mm以下の小さなプラスチック粒子)になります。
- 8割のカタクチイワシからプラごみが検出 *3
- 9割の食塩からマイクロプラスチックが検出 *4
- 北海道や沖縄の水道水からマイクロプラスチックが検出 *5
こういったニュースも相次いでいます。
海の動物の誤飲し、身の回りの食べ物や大気中にさえもマイクロプラスチックが含まれています。
マイクロプラスチックとそれに付着した有害物質を人間を含む生物たちが口にすれば、生態系に大きなダメージを与えることは明らかです。
次に、日本国内のプラスチックのリサイクルの現状についてです。
70%近くは焼却、6%は埋め立て、3%はケミカルリサイクル、22%は再利用(モノからモノに変わるリサイクル)となっています。*6
実は、70%を占める焼却には、プラごみを燃やしてプールを温水にすることも含まれます。
わたしたちがイメージしていた、”いわゆるリサイクル”と、実態は違いましたか?
わたしのイメージは違いました。
また、22%の再利用のうち、半分は海外へ輸出されています。
日本のように先進国で処理しきれないプラごみの輸出先はベトナム、タイ、マレーシアの東南アジアや途上国などが多くなってきています。
使い捨てプラのない未来をつくる方法は?
では、私たちはどんなことができると思いますか?
ぜひ一度考えてみてください。
ここまでお伝えしてきたように、リサイクルは問題の根本的解決にはなりません。
そもそも使い捨てではなく、繰り返し使える「リユース」や「リフィル」、「パッケージフリー」などを推進することが問題の解決につながります。
化石燃料業界や企業の在り方が変わることでこの問題は大きく改善されますが、一人ひとりの行動も大切です。
方法は大きく2つあります。
- 方法1:使い捨てプラスチックのない生活をする
- 方法2:本当のリユース・システムをつくる
まず、方法1「使い捨てプラスチックのない生活をする」を深堀りしてみましょう。
レジ袋の代わりにマイバッグを使う人は増えました。
こういった取り組みによってウミガメが間違ってレジ袋を食べてしまう可能性はほんの少しだけ減ってきています。
しかし、先ほど紹介したように、プラスチックごみのうちレジ袋は2%だけです。
ほしいものを買ったのに、ごみが出る。
使い終わった日用品を見ても、残るのはごみばかり。
どうしたら、ごみを出さないお買い物(=ゼロ・ウェイスト)ができると思いますか?
- マイカップを持ち込める地元のコーヒーショップ
- 持参した容器に入れてくれるお弁当屋さん
- 洗剤などの日用品や食品を、自分の容器で買える量り売りのお店
- 使い捨てパッケージに包まれていない野菜や果物が買えるお店
こういったお店の情報を集めたオンラインマップが「グッバイ・ウェイスト」です。
運営は、「地球のめぐみを100年先の子どもたちに届ける」ことを目指す国際環境NGOグリーンピース・ジャパンがしています。
「ごみを出さないお買い物」ができるお店を、地名や駅名や、欲しいものの分類から探すことができるので、あなたの身近にもお店がないかぜひチェックしてみてください♪
また、Instagramでは、グリーンピースのボランティアが、グッバイ・ウェイストに掲載されている全国各地のお店をご紹介しています!
ストーリーズでは地域別のお店を知ることができ、フィード投稿では店内の様子なども発信していますよ。
その他にも、繰り返し洗って使える食品用保存容器として有名なZipTopやstasher、持ち運び簡単な折り畳みマイカップとして有名なstojoなどの脱プラ商品を日々の暮らしに取り入れることも、循環型社会を作ることにつながりますよ。
▼脱プラに関わる商品や販売店(例) ・エコストアパパラギ →竹歯ブラシ、ステンレスストロー、セルローススポンジ、リップバームなど ・stojo →プラスチック性ドリンクカップ削減 ・ZIPTOP →サランラップなどの削減 ・stasher →サランラップなどの削減 ・LUSH →歯磨き粉、シャンプー、ボディウォッシュ、ボディクリーム、フェイスマスクなど ・Loop →ごみにならない再利用可能な容器でお買い物(イオンなどに導入) ・Megloo →リユース容器シェアリングサービス ・Re&Go →何度でも使えるシェアリング容器サービス
つづいて、方法2「本当のリユース・システムをつくる」について考えてみましょう。
あなたはコーヒー豆をはじめとした「詰め替え食品売り場」を目にしたことはありますか?
容器を持参すれば、レジ袋がいらなくなるだけでなく、商品の包装に使われるプラスチックを使わずにすみます。
消費者ができることとして、方法1で挙げたグッバイ・ウェイストに、あなたの知っている「ごみを出さないお店」の情報を登録していくことで、ごみを出さないお買い物を広げていくことができます。
2022年8月現在、「ごみを出さないお買い物ができる」お店が毎月数10件、新たに登録されています。
「本当のリユース・システムをつくる」ために、店舗の登録という形でこのスピードを速めていきませんか?
次に消費者だけでは難しいこととして、どんなことがあるでしょうか?
そう。
「企業」が使い捨てプラスチックを減らすことです。
日本でもレジ袋の有料化が始まりましたが、それは使い捨てプラスチック対策の第一歩にすぎません。
これで終えずに、商品の包装に使われるプラスチックの削減などにも働きかけることが必要です。
実は、グリーンピースは、企業や政府への働きかけを通じて、みんながつくる「使い捨てプラスチックのない未来」の実現を推進しています。
最近では次のような成果を上げています。
- 英国の石油大手British Petroleum社は、2030年までに石油・ガスの生産量を40%削減することを約束(2020年)
- 韓国の大手スーパー・ロッテマートが、アジアで初めて、2025年までに使い捨てプラスチックを半減させることを発表(2020年)
- 台湾のセブンイレブンが、2050年までにすべての使い捨てプラスチックの使用を廃止する計画を発表し、毎年10%の削減を目指す(2021年)
- コカ・コーラが、全世界で2030年までに25%の商品をリユース容器での販売に切り替えることを発表(2022年)
グリーンピースは、これまでも、独⾃の科学的調査によって⽬に⾒えにくい事実を明らかにし、その事実をもとに企業や国際社会にはたらきかけることで、さまざまな環境問題を解決に導かれています。
具体的には、署名キャンペーンを展開し、直接対話、解決策の情報提供などを実施されています。
こういった署名キャンペーンに賛同することで、企業を動かす一助となることができます。
いま展開されているキャンペーンはこちら。
そしてグリーンピースは、政府や企業からの支援は一切、受けていません。
活動の独立性を保つためであり、この独立性があるからこそ、企業や政府に強く発言することができるのです。
他にも、SNSでシェアする、寄付するなど、いろいろなアクションを通じて、「地球に良いこと」が当たり前のように実践されていく社会を一緒に実現する方法を紹介されていますよ。
「使い捨てプラスチックのない未来」はみんなでつくれる!
ここまで、世界のいきものが被っている問題、わたしたちに及ぼす影響や問題の構造を、海に住む動物やグリーンピースの情報を踏まえて、問題の解決策を紹介してきました。
まとめると、3つの関わり方をご紹介しました。
- グッバイ・ウェイストを使って、ごみを出さずにお買い物ができるお店を利用する生活を送る
- ごみを出さずにお買い物ができるお店を探したり、知っているお店をグッバイ・ウェイストに登録して、ごみを出さないお買い物を一緒に広げていく
- あなたが変わってほしいと思う署名に一筆して、企業や政府の意思決定に働きかける
「問題が⼤きすぎてどうせ無理・・・」と思いますか?
みんなが少しずつ生活を変えれば、日本の海域に浮かぶ世界平均の約27倍ものマイクロプラスチックは少しずつ減り始めます。
途上国に輸出されるプラスチックも少しずつ減り始めます。
そして、「使い捨てプラスチックのない未来」が近づきます。
あなたは今日プラスチックを使いましたか?
きっと、”1日に1回もプラスチックを使わない”人は本当に少ないと思います。
この記事を読んで、日常に少しでも疑問を感じたら、何かを始める良いきっかけかもしれません。
持続可能な社会の実現と、環境問題を食い止めるために、ぜひ紹介したWEBサイトを確認してみてください。
今回はプラスチックにまつわる問題を取り上げましたが、わたしたちの暮らし方で他にも動物が犠牲になっていることがあります。
「わたしの幸せ」だけでなく、世界の人々や美しい動物たちがもっと幸せでいられるように、何ができるか気になる人はこちらの記事もチェックしてみてください。
*1:環境省の調査 *2:プラスチック循環利用協会のプラスチックリサイクルの基礎知識2020 *3:東京農工大学の調査 *4:National Geographicの記事 *5:千葉工業大学・釧路市・沖縄市の調査 *6:プラスチック循環利用協会の調査
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