寄付を考えたとき、「100%支援先に届くのが理想」と思ったことはありませんか?
確かに、寄付がすべて直接支援に使われるのは素晴らしいことのように思えます。
しかし、実際にはNPO・NGOの活動を支える「組織基盤」も重要で、そのための管理運営費(間接費)も必要不可欠です。
たとえば、資金調達を担うファンドレイザー(Fundraiser)の仕事は単なる「経費」ではなく、団体のミッションを継続するための「投資」と考えられます。

なぜNPOに組織基盤が必要なのか?
NPOが取り組む社会課題は、多くの場合、行政や企業だけでは対応しきれない問題です。
その解決には、数年ではなく、長期的な支援が必要になります。
根本的な課題解決のために、単発の支援だけではなく継続的な活動が求められるのです。
しかし、その活動を支えるには資金が必要。
資金がなければ、支援を届けることもできません。
ファンドレイザーは、社会課題の解決とNPOの存続をつなぐ重要な役割を担っています。
また、NPOの運営には、現場で働くスタッフの人件費やオフィスの運営費も必要です。
これらの費用がなければ、支援活動をスムーズに行うことはできません。

NPOの立ち上げから資金調達までの課題
日本には約50,000のNPO法人がありますが、多くの団体が資金集めに苦労しています。
特に、新しくできたNPOや経営視点で成長しないNPOは次のような課題にぶつかりがちです。
- 短期的な支援活動に集中し、経営基盤の構築が後回しになる
- 資金調達の多様化が進まず、助成金や人脈頼みになりがち
- 経理や組織運営の専門人材が不足し、非効率な運営が続く
- ミッションと経営のバランスが取れない
- 創業者の情熱で動くが、組織運営のノウハウが不足
- 現場優先で組織づくり(人材確保・育成・財務戦略)が後手に回る
- 持続的な資金確保の戦略不足
- 助成金が切れた後の資金戦略がない
- 寄付者との関係構築が弱く、単発の支援で終わる

ファンドレイザーが考える資金調達戦略
ファンドレイザーは、NPOの成長を支える戦略的な役割を担っています。
NPOやNGOの資金源にはいくつかの種類があります。
例えば、財源ごとの特性分析して資金調達戦略を考えます。
まず、「寄付や会費」は、支援者の共感をもとに成り立つもので、長期的な関係を築きながら安定的な支援を受けることができます。
一方で、「事業収入」は市場の仕組みの中で生み出される収益で、組織の経済的な成長につながります。
「助成金や補助金」は、特定の事業を進めるための貴重な資金源ですが、毎年継続して受け取れる保証はなく、不安定な側面もあります。
さらに、行政や企業と連携する「事業受託」では、社会的な課題解決に貢献しながら資金を確保することが可能です。
最後に、「融資や(疑似私募債)」は借入による資金調達の方法であり、リスクを伴いますが、成長のための投資として活用することができます。
これらの資金源を適切に組み合わせることで、持続的な運営が可能になります。

その上で、特に団体に合う資金源の見極めを行います。
NPOのミッションや強みに合った資金調達手法を選定するのです。
(例:政策提言型のNPOなら助成金・受託が強み、直接支援型なら寄付がメイン など)
また、経営フェーズに応じた資金ポートフォリオを変えていくことも重要です。
以下は一例。
- 創業期:初期資金として助成金・人脈を活かした寄付(クラウドファンディングなど)
- 成長期:企業からの事業受託や大口寄付で財源を拡大し、安定財源の寄付・会費にも着手
- 成熟期:複数の財源をバランスよく組み合わせ、各資源へ投資・持続するモデルを構築

ファンドレイザーの多面的な役割
ここまでNPOの活動を支えるには、寄付だけでなく、その運営に必要な費用も大切なことを伝えてきました。
ファンドレイザーは、ただお金を集めるだけの仕事ではありません。
例えば、寄付をお願いするためには、どんな困っている人がいるのか、どんな問題を解決しようとしているのかを伝える必要があります。
それに、寄付を集めるだけでなく、NPOの活動を広めるために、SNSやイベントを活用して支援者を増やしたり、ボランティアの人たちと一緒に活動を盛り上げることも大事な仕事です。
だから、ファンドレイザーは、みんなにNPOの意味を理解してもらい、共感してもらうためにいろんな方法を使って努力しているんです。

一般的に、「ファンドレイザー」と聞くと、「個人や企業から寄付を集めたり、クラウドファンディングを担当する人」と思われがちもしれませんが、実際にはNPOの活動を長期的に支える資金戦略を考える重要な役割を担っています。
これが、NPOの活動が続けられるために必要な「裏方」の仕事なのです。
筆者も登壇の場や発信の機会では、「ファンドレイジング=組織の成長と社会課題解決をつなぐ仕事」であることをこれからも伝えていきたいと思っています。
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